不動産の取引のプロとして関わってくる宅建士(=宅地建物取引士)。一体どのような役割をもってどのような仕事をしているのでしょうか。変遷を含めてご紹介します。
「宅地建物取引士」とは
「宅地」とは土地のこと、「建物」とは家やビル等のことを指します。そして、家や土地等の不動産に関わる取引に通じるプロのことを「宅地建物取引士」といいます。
不動産取引は高額なわりに、相応の知識が必要です。適切な判断ができないと、相手方から搾取されてしまう可能性もあります。このようなトラブルを防ぐために、「宅地建物取引士」という国家資格があり、「宅地建物取引士」が不動産取引の契約当事者の間に入ることで、公平な取引を推進します。
「宅地建物取引士」の独占業務とは
「宅地建物取引士」の独占業務は全部で3つあります。共通しているのは、「契約当事者の間に入って、公平な取引ができるようにサポートする役割」という点です。
重要事項説明書の説明
重要事項説明書とは、不動産の取引にあたって契約当事者双方が事前に把握しておくべき重要な事項を記した説明書のことです。
不動産取引は高額な取引となります。契約した後になって「思っていたのと違った!」と気づいたところで、解決するのは難しく、訴訟問題に転じることも少なくはありません。
そこで、契約締結を行う前に「宅地建物取引士」が契約当事者それぞれに対して重要事項説明書にて説明することで、契約に関する認識差を埋め、トラブルを未然に防ぐのです。
重要事項説明書への記名・押印
前述の重要事項説明書に記名・押印できるのも、「宅地建物取引士」だけです。重要事項説明書に、必要事項がもれなく記載されていることを証明する役割を担っています。
契約書への記名・押印
契約書への記名・押印ができるのも、「宅地建物取引士」だけです。こちらも同様に、契約書に必要事項がもれなく記載されていることを証明する役割を担っています。
「宅地建物取引主任者」から「宅地建物取引士」への名称変更
もともと宅建士は「宅地建物取引主任者」という名称でしたが、2019年度から「宅地建物取引士」に名前を変えました。いわゆる、弁護士や税理士、司法書士と並ぶ「士業」に仲間入りしたのです。
「士業化」により、宅地建物取引士に求められる事柄も変わりました。
- 暴力団員の排除
- 「購入者の利益保護」および「円滑な宅地建物の流通に資する」という業務処理の原則
- 信用失墜行為の禁止
- 知識および能力の維持向上
「宅地建物取引主任者」時代も暗黙の了解として求められていた事ばかりですが、士業化にあたって宅建業法にこれらのことが明文化され、より厳正に「宅地建物取引士」としての役割を全うすることを求められるようになったのです。
もともと「宅地建物取引主任者」だった方たちの本音
長年「宅地建物取引主任者」として勤務されてきた方々にお話を聞くと、「まさか士業になるとは思っていなかった」「責任が重くなったと感じている」等の声があがりました。中には、「正直あまり意識していない」「名称以外は何も変わらない」という方もいらっしゃいます。
どんな専門家にもいえることですが、資格を取得した時期や各々の考え方によって、その責任感の度合いは大きく変わるようです。
不動産の取引を行う際は、担当者が本当に信頼できる「宅地建物取引士」かどうか、よく話を聴き自分の目でみて確かめるようにしましょう。接したときに、「この方には誠実さがあるか?」という視点を持つだけで、十分見極めることができます。
まとめ
宅建士の仕事は、不動産取引を公平に成り立たせるためのサポートです。
中でも「宅地建物取引士」にしかできない独占業務が3つあります。「重要事項説明書の説明」「重要事項説明書への記名・押印」「契約書への記名・押印」。いずれも、契約当事者双方が誤解を持ったまま取引を進めてしまわないように、トラブルを未然に防ぐために重要な仕事です。
また、2019年度からは「士業化」しており、多くの宅建士が責任を持って「不動産に関する専門家」としての役割を全うしています。
宅建士の存在は、不動産取引にとても大きな影響を与えます。ご自身が不動産取引をする際には、担当者が心から信頼できる宅建士かどうか、よく見極めるようにしましょう。
コメント